長時間労働のリスク ~今すぐ取り組んで欲しい「残業削減」~

電通の女性新入社員が昨年12月に過労自殺し、先月7日に厚生労働省が電通を強制捜査したことは記憶に新しいことと思います。

電通は、1か月当たりの残業時間を実際よりも数十時間少なく申告させることが常態化していたことが発覚しました。

 

過労自殺した女性がうつ病を発症したときの残業時間は105時間でした。

代理人弁護士によると、同女性は残業時間を月70時間以内として申告するよう上司から指導を受けていたため、昨年10月は「69.9時間」、11月は「69.5時間」と記載していたとのことです。

 

電通では、強制捜査によって実際の勤務時間と会社に申告した勤務時間が食い違う社員が多数いることが判明しました。月に数十時間の違いがある社員もいたとのこと。「自己啓発」の時間にあてたとして、勤務時間から外すよう指示していたとみられます。

 

労働基準法の規定では、法定労働時間は18時間、140時間までですが、労使が同法36条に基づく「36(さぶろく)協定」を結べば、原則として月45時間、年360時間の時間外労働が可能となります。さらに特別条項を結べば残業時間は事実上青天井となります。もちろん割増賃金の支払いは必要です。

 

厚生労働省は昨年、東京・大阪両労働局に過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)を設けて長時間労働や残業代不払いの企業への立ち入り調査を強化しています。

さらに今年度は従来の「月100時間超の残業をさせている企業」から「月80時間超の残業をさせている企業」へと捜査対象を拡大しています。

 

残業時間が月80時間を超える状態が26カ月続くと、厚生労働省が定める脳・心臓疾患の労災認定の目安に達します。労災認定されるということは会社の責任も問われ、賠償請求される可能性も高まります。

 

政府の働き方改革実現会議は残業時間に上限規制を設ける方向で来年3月をめどに検討を進めています。おそらく上限規制は月80時間が目安になるかと思われます。

 

18時間および140時間という法定労働時間を超える残業時間については、25%増しの割増賃金を支払う必要があります。平成224月から一定の基準を満たす大企業は、1か月に60時間を超える残業時間については、50%増しの割増賃金を支払う必要があります。

 

長時間労働はリスクがあり、残業代コストも高くつきますので、企業は残業削減の取り組みに力を入れる必要があります。

業務効率を高め、ムダな時間を省き長時間労働を抑制すれば、従業員の過労死のリスクも減りますし、趣味や運動、家族や友人と過ごす時間も増やせますので、不満やストレスも軽減されるはずです。

労使双方にとって残業時間の削減はメリットがあります。長時間労働が常態化している企業はすぐにでも残業削減に取り組んでください。

 

大谷雄二

 

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