長時間労働抑制の切り札となるか「勤務間インターバル規制」

 昨今、長時間労働是正の問題はニュースを見ない日がないくらい頻繁に取り上げられています。今回は政府が提唱する「働き方改革」実現のための一環として注目されている「勤務間インターバル規制」について考えます。

 

 現在、わが国では労働基準法により労働時間は18時間、140時間と定められており、これを超えて労働させるには36(サブロク)協定の締結および労働基準監督署への届出が必要です。

 残業時間についても月45時間、年360時間という上限基準があるものの、「特別条項付き」36(サブロク)協定を締結すればこの上限を超えて労働者を働かせることができるため、実際には長時間労働に対する法規制は緩やかになっています。

 

 しかし、「労働者の心身の健康を保持する」という労働安全衛生法の本来の趣旨を考えれば、『労働時間の長さ(残業時間数)』よりも『勤務と勤務の間の休息時間の長さ(勤務間インターバル)』に着目して長時間労働の抑制や、ワーク・ライフ・バランスの向上を図っていくこの制度に注目が集まっているのも頷ける気がします。

 

 当日の勤務終了から翌日の勤務開始までに一定時間の休息時間(インターバル)を確保するこの「勤務間インターバル規制」は、既にEU(ヨーロッパ連合)では「24時間につき最低連続11時間の休息時間」が義務付けられています。

 例えば午前9時から午後6時までが就業時間である労働者が午後11時まで残業した場合、その11時間後である翌日の午前10時までは本来の始業時刻午前9時を超えても働かせてはならないという規制で、その結果、1日の拘束時間は必然的に13時間未満になるというわけです。ちなみにこのケースで勤務に就いていない午前9時から10時までの1時間分の賃金はカットされません。

 

 この「勤務間インターバル規制」、日本ではまだ法制化されておらず、大企業を中心に企業レベルで自主的に導入されているにとどまっていますが、導入した中小企業に助成金を支給することにより促進しようとする流れは続くと思われます。

 

 長時間労働が労働者に与える影響のなかででいちばん深刻なものは健康への影響です。労働者の疾病(脳・心臓疾患や精神疾患など)をもたらす危険性を高め、過労死が社会問題にもなっています。  

 また、長時間労働による睡眠不足は結果的に仕事の能率を低下させ、さらには眠気による事故等につながるリスクも高まります。

 労働者の心身の健康を守るという意味においても、この「勤務間インターバル規制」の動向を注目していきたいと思います。

 

野々山 環

 

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