平成31年就労条件総合調査結果公表 年休取得率は52.4%と横ばい

厚生労働省から、「平成31年就労条件総合調査」の結果が公表されています。「就労条件総合調査」は、民間企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的として実施されています。調査対象は、常用労働者30人以上の民営企業で、今回は、有効回答を得た4,127社の調査結果を集計したものです。調査によると、年次有給休暇の取得状況は、平均取得率52.4%となっており、前年度の平均「51.1%」と比べるとわずかに改善したものの、「付与された日数の半分程度しか、有給を取得できていない」という状況が続いています。

 

ポイントは次のとおりです。

  • 年次有給休暇の取得状況(平成30年(又は平成29会計年度))

・年間の年次有給休暇の労働者1人平均付与日数18.0日〔前年調査18.2日〕

うち、平均取得日数9.4日〔同9.3日〕

・平均取得率52.4%〔同51.1%〕

 

前年度の平均「51.1%」と比べるとわずかに改善したものの、「付与された日数の半分程度しか、有給を取得できていない」という状況が続いています。

総合旅行サイトのエクスペディア・ジャパンが行った『世界19カ国 有給休暇・国際比較調査2018』によると、2018年の日本の有給取得率は50%で、3年連続最下位。他国を見てみると取得率上位3カ国のブラジル、フランス、スペインが100%、日本の次に有給取得率の低いオーストラリアは70%となっています。日本の有給取得率は世界的に見てもかなり低い状態です。

https://welove.expedia.co.jp/press/40915/

 

■有給取得率が低い理由

厚生労働省が2014年に行った『ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査報告書 P6769』によると、有給取得率の低い人ほど、「一人当たりの仕事量が多い」「一部の人に仕事が偏りがち」「突発的な業務が生じやすい」職場だと感じているようです。

 

また、有給取得がなかなか進まない理由として、「忙し過ぎる」「社会や企業に長時間労働の短縮や休暇取得促進の意識がない」「もしものために休める日を残しておきたい」「上司や周囲の評価が気になる」といったことを挙げています。この結果から、以下の3つの要因で、日本の有給消化率が低いと考えられます。

 

①慢性的な人手不足と業務過多

常に人手不足な職場では、「誰か一人でも休んでしまうと業務が回らなくなってしまう」という状況に陥りがちです。また職場全体が人手不足ではない場合でも、専門知識を持つ人が限られていたり、特定の人しかできない業務があったりすると、「自分しかできない業務があるので休めない」「何か突発的な対応が必要になった際に、対処できる人がいないため休めない」といった事態が起きています。

 

②企業風土と管理職の意識不足

「休まない人が評価される」という企業風土があると、従業員は評価を気にしてなかなか有給を取得できません。また、管理職自身がほとんど有給を取得していない状況では、部下が有給を取得しようという意識がなかなか働きません。

 

③いざというときの備え

介護や子育てといった家庭の事情を抱える従業員は、突発的な休みが必要なときに備えて、普段は積極的に有給を使うことを控える傾向があるようです。またそうした事情がなくても、自分が急に体調不良になったときに備えて、有給の取得を最低限に抑えようとする従業員もいると考えられます。

 

厚生労働省の『平成30年就労条件総合調査の概況 p6

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf

によると、「電気・ガス・熱供給・水道業」「複合サービス事業」「鉱業、採石業、砂利採取業」「情報通信業」「製造業」「金融業、保険業」の上位6業種の有給取得率は、全体平均(51.1%)」を10%弱~20%ほど上回っています。

 

一方で、「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」「生活関連サービス業、娯楽業」「建設業」「教育、学習支援業」の下位5業種の有給取得率は、全体平均よりも10%弱~20%弱下回っています。有給取得率の一番高い業種と低い業種とでは、約40%もの開きがあります。

 

この結果から、有給取得率の高い業種の特徴として「法人に商品・サービスを提供している」「自分のペースで仕事を進めやすい」などが考えられます。一方で、有給取得率の低い業種では「個人に商品・サービスを提供している」「顧客やチームの状況に合わせて仕事を進めることが多い」「基本的に平日休みで土日は休みづらい」「シフト勤務が多い」といった特徴がみられます。

 

  • 勤務間インターバル制度の導入状況別企業割合(平成3111日現在)

・「導入している」企業3.7%〔前年調査1.8%〕

・「導入を予定又は検討している」企業15.3%〔同9.1%〕

 

年休取得率、勤務間インターバル制度の導入企業割合ともに、前年調査よりも増加していますが、いずれも政府目標にはほど遠いようです。

 

【政府目標】

・年休取得率……2020年までに70%以上

・勤務間インターバル制度の導入企業割合……2020年までに10%以上

 

詳しくは、こちらをご覧ください。

 

 

参照ホームページ[厚生労働省]

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/19/index.html

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