定額残業代が裁判で否認されない設計と運用について①

1.定額残業代を有効にするポイント

最近、定額残業代制度を否認して、企業から多額の未払い残業代を請求する弁護士が増えています。弁護士がこの分野に注力する背景には、企業側の定額残業代の設計と運用のずさんさや誤認識があります。そのため、弁護士側からすれば勝ちやすい裁判なのです。

経営者や人事・総務担当者の方のお話を聞いていると会社に都合の良い解釈が一人歩きしていると感じることが多々あります。いざ裁判となった時に、都合のよい部分だけを主張してもほぼ勝ち目が無いということを理解して欲しいと思っています。

特に近時の裁判例を見ますと定額残業代の裁判になった場合、ほとんどの企業が無効とされるのではないかと思うほど、裁判官の判断は年々厳しくなっています。

そこで、裁判になっても有効性が認められる定額残業代の設計のポイントをまとめます。

① 定額残業代の金額を明確にすること

② 何時間分の残業代相当額か明確にすること

③ 定額残業代に含まれる時間分を超える残業代を支払っていること

④ 定額残業代の中に残業代以外の要素が含まれていないこと

⑤ 定額残業代に含まれる時間が36協定の限度時間内であること

⑥ 定額残業代の計算根拠が明確であること

⑦ 就業規則や賃金規程、雇用契約書などに明示していること

⑧ 個々の従業員へ説明し、同意を得ていること

しかし、望ましいのは裁判をして勝訴し、有効性を勝ち取るというのではなく、弁護士が相談を受けた時点で裁判をしても勝ち目が無いことが判るだけの明確な運用をすることです。

そうすることで裁判に多くの時間を費やすこともなくなり、従業員に対しても明確で正々堂々とした会社の姿勢を表すことにもなりますので、従業員も不毛なことで頭を悩ますこともなくなりますし、会社への信頼も増すのではないでしょうか?

所長:大谷雄二

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