定額残業代が裁判で否認されない設計と運用について④

3.定額残業代の設計のポイント(前回のつづき)

② 何時間分の残業代相当額か明確にすること

その定額残業代の手当が何時間分かはっきりとわかりやすく給与規程や雇用契約書などに定めてください。

その時間は全従業員が同じである必要はありません。従業員ごとに異なる時間であっても合理的な説明が可能であれば問題ありません。

ただし、ある一定以上の時間を定めると無効となるリスクがありますので、後述します。

③ 定額残業代に含まれる時間分を超える残業代を支払っていること

例えば、定額残業代として定めた時間が1か月40時間なのであれば、ある月に50時間の残業をしているときは、40時間を超えた10時間分について合法的に計算し、定額残業の手当とは別に支払う必要があります。

「残業代の計算や残業時間の管理が面倒なので、定額残業代を導入したい」という相談をよく受けます。この場合、定額残業代として定めた時間を超えた分について払おうという気がそもそもありません。ですので時間管理もしませんし、あるいは払わなくてもよいだけの長時間の定額残業時間を定めようとします。

このような会社は裁判官から「残業代を払わないために定額残業代を導入したのだな」と当然に思われますので無効とされるでしょう。

定額残業代の趣旨は給与の月額に一定の残業代が含まれているとすることであって、労働時間を管理しないことや、それ以上の残業代を払わないようにするためではありません。

ですので、適度な定額残業時間を定めて、労働時間を適切に管理し、オーバー分が発生したら合法的に支払う必要があります。そして、そのように運用している会社は裁判でも有効と認められています。

大谷 雄二

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