定額残業代が裁判で否認されない設計と運用について⑤

3.定額残業代の設計のポイント(前回のつづき)

④ 定額残業代の中に残業代以外の要素が含まれていないこと

定額残業代として定めた手当の中に残業代以外の要素を入れないでください。残業代以外の要素を入れると計算根拠が不明確になりやすいですし、意味もわかりにくくなります。

定額残業代のみの手当として独立させて、その他の要素があるとしたら、それは別の手当としてください。

⑤ 定額残業代に含まれる時間が36協定の限度時間内であること

「定額残業代として定める時間は○時間が妥当か」という質問をよく受けます。

一概には回答できません。業界の給与水準や、地域の給与水準、総支給月額、平均残業時間、そして会社の意向など様々な要素を勘案する必要があります。

しかし、あまり長時間を定めますと無効とされる確率が高まると考えた方がよいでしょう。

例えば過労死の基準の80時間(健康障害の発症2~6ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすい)というラインがありますので、この基準を超える時間設定は無効となるリスクが高いといえます。

80時間超の時間設定で実際に過労死が発生した際は、遺族からの損害賠償請求額が高額になります。そもそも過労死ラインを超えて働かせる意図があったのだから、会社に過労死させられたと主張できます。

月95時間の定額残業代について、全額を無効とはしないものの36協定の限度時間の45時間分の定額残業代としては有効とした裁判例があるので、45時間までで定めるのが安全といえます。

大谷 雄二

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