令和10年度中に週10時間以上で雇用保険を適用へなどの今後の見直しの方向を示す

厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会は、雇用保険制度の見直しの方向性について、労働政策審議会職業安定分科会に報告し、了承を得たため公表しています。これは、令和5年9月7日から議論を重ね「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」としてとりまとめたものです。厚生労働省としては、この報告書の内容を踏まえ、令和6年通常国会への法案提出に向け、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定です。
この報告には、今後の雇用保険制度等の見直しの方向が示されています。

<雇用保険部会報告で示された主な見直し事項>
□ 週所定労働時間20時間未満の労働者に対する『雇用保険の適用拡大』
□ 正当な理由のない自己都合離職者への基本手当の給付制限期間の見直し
□ 教育訓練給付の拡充
□ 教育訓練中の生活を支えるための給付や融資制度の創設
□ 出生後一定期間内に両親ともに育児休業を取得することを促進するための育児休業給付の給付率の引上げ
□ こどもが2歳未満の期間に、時短勤務を選択したことに伴う賃金の低下を補い、時短勤務の活用を促すための給付の創設
□ 育児休業給付を支える財政基盤の強化
なお、特に注目を集めているのは、『雇用保険の適用拡大』です。

詳細は、次のとおりです。
<雇用保険の適用拡大の方向>
1:雇用保険制度の適用拡大について

○現在、週の所定労働時間が20時間以上の雇用労働者を適用対象としている雇用保険制度について、雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、雇用のセーフティネットを拡げる観点から、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者にも適用することとし、事業主の準備期間等を勘案して、2028(令和10)年度中に施行することとすべきである。

施行に向けては、雇用保険制度適用の意義や重要性、メリット等について十分な理解を得られるよう、労使双方に対して丁寧な周知を行うべきである。また、新たに雇用保険制度の適用対象となる労働者のより安定的な就業が促されるよう、能力開発や雇用管理改善等に取り組む事業主への支援を行うとともに、中小企業の事業主をはじめとして追加的な事務負担が生じることを踏まえ、事業主の負担軽減に資する申請手続きの簡素化やオンライン化を一層進めるなど、受給資格者の増加に対応すべく業務効率化等を着実に進めるべきである。

○新たに適用拡大により被保険者となる者は、適用要件を満たした場合、現行の被保険者と同様に、失業等給付(基本手当等、教育訓練給付等)、育児休業給付、雇用保険二事業の対象とすることとし、給付水準も同じ考え方に基づき設定すべきである。現行の被保険者と同様の給付等の仕組みとすることを踏まえ、保険料率、国庫負担割合についても現行の被保険者と同等の水準として設定すべきである。

○また、適用範囲の拡大後の基本手当の支給等に関する基準等については、基本的には現行の取扱いとその考え方を維持しつつ、従来の週の所定労働時間が20時間以上という適用基準が、その半分の10時間以上となることを踏まえて、以下のとおり、必要な見直しを行うべきである。

①被保険者期間の算定基準
基本手当をはじめとする失業等給付の受給資格の判定の基礎となる被保険者期間については、現行のとおり、離職日から2年間に被保険者期間が12箇月以上(特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、1年間に6箇月以上)とすべきである。
その上で、1箇月として被保険者期間に算入されるための基準について、現行の「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある場合」を、「離職日から1箇月ごとに区切っていった期間に賃金の支払の基礎となった日数が6日以上又は賃金の支払の基礎となった労働時間数が40時間以上ある場合」へと見直すべきである。

②失業認定基準及び自己の労働により収入がある場合の取扱い
基本手当の支給に当たっては、受給資格者が失業状態にあることの確認(失業認定)をするため、4週間に一度公共職業安定所に来所を求め、過去28日間の各日に就業していたか否かを申告させているが、その日の労働時間が4時間(週20時間相当)以上であるか否かを基準として、原則として、労働した日のうち、労働時間が4時間以上の日については失業認定を行わず、4時間未満の日については、自己の労働によって得た収入額に応じて減額した上で基本手当を支給することとしている。

今般の適用範囲の拡大に併せ、この失業認定の基準となる労働時間を、1日当たり2時間(週10時間相当)とすべきである。

また、現行の減額の仕組みを維持した場合、適用拡大後は、1日2時間未満の労働によって得た収入に基づき調整を行うこととなるが、2時間未満の労働で得られる収入は一般的には少額であることも踏まえ、簡素化等の観点からこれを廃止すべきである。

③賃金日額の法定の下限額、最低賃金日額
現在、法律で定められている賃金日額の下限額は、週所定労働時間20時間以上という現行の適用基準が労働基準法(昭和22年法律第49号)の法定労働時間(40時間)の2分の1であることを踏まえ、下方の屈折点(給付率が80%から逓減し始める点)の額の2分の1とされているが、今般の適用範囲の拡大の施行に合わせて、下方の屈折点の額の4分の1(週所定労働時間10時間が法定労働時間週40時間の4分の1であるため)とすべきである。
また、雇用保険法(昭和49年法律第116号)第18条に基づき毎年賃金日額の範囲等を変更する際に比較する最低賃金日額(現在は、最低賃金(全国加重平均)で週20時間労働した場合を基礎として設定)についても、最低賃金(全国加重平均)で週10時間労働した場合を基礎として設定するよう見直すべきである。

○複数の事業所で雇用されている労働者(マルチジョブホルダー)への雇用保険の適用については、現行では、複数の事業主との間で雇用保険の適用基準を満たす場合には、主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者とすることとされている。適用の範囲を週所定労働時間10時間以上に拡大することに伴い、複数の雇用主との関係で被保険者要件を満たすケースが増加することが想定されることから、現場における取扱いに混乱が生じることのないよう、例えば賃金日額の高い方の事業所を主たる事業所とするなど、判断に当たっての基本的な考え方を施行までに明確化し、周知すべきである。

○また、令和2年の雇用保険法改正により、65歳以上の労働者を対象に、2つの事業所での週所定労働時間がそれぞれ20時間未満であって合算して20時間以上となる場合に本人の申出を起点として雇用保険を適用する仕組みが設けられ、令和4年1月から施行されており、施行後5年を目途として検討を加えることとされていることから、給付の支給状況等この仕組みの実施状況の把握と検証を行い、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用の在り方等について引き続き検討すべきである。

この点について、労働者代表委員からは、その検討の際には、雇用保険において「失業状態」をどのように捉えるかについても合わせて検討する必要があるとの意見があった。

なお、週所定労働時間10時間以上で雇用保険が適用されることとなることにあわせて、この65歳以上の労働者の適用の特例についても週所定労働時間の基準を見直すとともに、適用拡大の施行前にこの特例の適用を受け始めた労働者が不利とならないよう、所要の経過措置を設けるべきである。

○さらに、雇用保険制度の適用範囲の拡大に伴い、結果として、雇用保険制度の対象とならない者を対象とする求職者支援制度でカバーされていた者の一部が同制度の対象者から外れることとなるが、第二のセーフティネットである求職者支援制度の果たすべき役割・機能を踏まえて、所要の措置を講ずるべきである。

○なお、労働者代表委員からは、当分の間、任意適用事業とされている農林水産業の個人事業で常時5人未満の労働者を雇用する事業について、暫定任意適用事業の撤廃を含めて検討を行うべきとの意見があった。

厚生労働省では、この報告書の内容を踏まえ、令和6年通常国会への法案提出に向け、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定としています。引き続き、今後の動向に注目しておきましょう。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107715_00006.html
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